チェンマイ(北タイ)料理

 タイでは、チェンマイおよび北タイ料理の特徴を「マン」という言葉で表現する。マンとは、“脂っこい”という意味であるが、これはケープムーやナンガイのような揚げ物を主食のように食べているからなのか、ココナツミルクを使わない料理がほとんどで、油がはっきりと浮いて見えるようなものが多いからなのか、いくつか理由を考えてみたのだが、くわしいことはわからない。
 チェンマイ(北タイ)料理は、どちらかというと、クルンテープ(バンコク)などの中部タイ料理よりもイサーン(東北タイ)の食べ物に近いと言えるだろう。主食である米は、今日ではうるち米(カオスエイ)も多く食べられているが、基本的にはもち米(カオニヨウ)だし、ガイヤーン(焼き鳥)やソムタム(青いパパイヤのサラダ)、ラープ(肉の和え物)も日常的に食べられているなど、共通点は多い。
 また一方で、ビルマ(ミャンマー)料理の影響も受けており、その最たるものがカーオソーイ(カレーラーメン)だ。チェンマイ名物として広く知られているカーオソーイは、ビルマがその起源であると言われている。
 このコーナーでは、主食と同格の食べ物や日本で言えば味噌、漬物にあたるものを集めた「ベーシックフード」、ご飯のおかずとして食べる「一品料理」および「麺類」に分類してチェンマイ料理を紹介すると同時に、山岳少数民族の一般家庭で食べた料理を紹介する予定にしているが、基本的に食材や料理方法といったことにはあまり興味がないため、残念ながら詳しい説明をすることができない。この方面に詳しい方がいらっしゃたら、ぜひフォロー解説をお願いしたいところだ。



ベーシックフード

■カオニヨウ(もち米)の上手な食べ方

 チェンマイを含め、タイ北部および東北タイ(イサーン)の主食はカオニヨウ(もち米)だ。

 チェンマイのレストランでカオニヨウを頼むと、たいていは小さなカゴに入れられた状態でテーブルに運ばれてくる。 テーブルの上にあるのはフォークとスプーンだけで箸はない。さて、これをどうやって食べたらいいのだろうか。
  地元のコンムアン(チェンマイ人)に、食べ方を実演してもらった。

(1)入れものから適量のカオニヨウを取る


チェンマイ(タイ北部)の主食、カオニヨウ(もち米)の食べ方(1) おにぎりを作るわけではないので、それほど多くなくてよい。














(2)一口サイズにちぎる

チェンマイ(タイ北部)の主食、カオニヨウ(もち米)の食べ方(2) もち米は腹持ちがよく、たくさん食べると後でお腹が苦しくなってくる。一口サイズ(通常の寿司のシャリの半分〜1/3くらいの小さめサイズにして、ちょっとずついただくのがよい。








(3)カオニヨウを丸めて固める

チェンマイ(タイ北部)の主食、カオニヨウ(もち米)の食べ方(3) 写真では、片方の手のひらの上でカオニヨウをもう片方の手の指で押さえながらころがすようにして丸めている。人によっては、片方の手の指だけを使って丸める。固める程度は、そのカオニヨウをつけるおかずによって異なる。ナムプリックや炒め物などの場合は少しやわらかくてもいいし、スープや水気の多いおかずにつけるのであれば、崩れないように固めに握っておくとよい。





(4)おかずにつける

チェンマイ(タイ北部)の主食、カオニヨウ(もち米)の食べ方(4) 丸めたカオニヨウにおかずをつける。写真はナムプリックヌムだが、こうしたものなら、カオニヨウを皿になすりつけるようにしてつけてもいいし、炒め物のようになすりつけることがむずかしいおかずであれば、カオニヨウと一緒に皿から指でつまんで取るとよい。おかずがナムプリックヌムなどの場合、辛いものが苦手な人は、ほんの少しにしないと口の中で火を噴くことになるので注意が必要だ。




(5)食べる

チェンマイ(タイ北部)の主食、カオニヨウ(もち米)の食べ方(5)

(6)手についたカニヨウを落とす

チェンマイ(タイ北部)の主食、カオニヨウ(もち米)の食べ方(6) 手に残ったカオニヨウの粒は、指と手のひらを使って払い落とすようにするが、一番いい方法は、揚げ物がおかずの中にあったら、食事を始める前にその衣をほんの少しだけちぎって手のひらや指全体に擦り付けておくことだ。こうすると手の表面が油で覆われて、カオニヨウがまったく手につかなくなる。

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■ケープムー

ケープムー 豚皮のカリカリ揚げ。普通は、このままナムプリックをつけて主食のように食べる。どちらかというと、カオニヨウ(もち米)と同じような位置付けの食べ物だ。
 チェンマイ名物のひとつで、この地を訪れるタイ人の多くは、このケープムーとナムプリックヌム(後述)をお土産として大量に買い求める。ワローロット市場には、そうしたタイ人を相手にしたケープムーを売る店がいくつも並んでいる。
 写真のケープムーはごく一般的なものだが、このほかに使っている部位などによって、ケープムーライマン、ケープマンなどいくつものバリエーションがある(写真参照)。

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■ナン・ガイ

ナン・ガイ 文字通り、鶏(ガイ)の皮(ナン)をカリカリに揚げたもの。ケープムー(豚皮のカリカリ揚げ)やカオニヨウ(モチ米)と同じように、ナムプリックやほかのおかずなどと一緒に指でつまんで、あるいはゲーン(カレー)やスープなどの汁物にちょっと浸して食べるので、主食のようなものと考えていいだろう。香ばしく揚げられたナンガイは、それだけを食べても十分おいしいが、個人的には辛いナムプリックヌムと一緒に食べるのが一番好きだ。
 タラート(市場)では、材料の関係からかガイトート(鶏のから揚げ)の店で小さなビニール袋に入れられて売られていることが多い。少量で売られているのは、このナンガイが足が速いからだそうで、毎回食べ切れる分だけを買ってくる、というのが基本らしい。確かに、日本に何回かナンガイを持って帰ってきたことがあるが、冷蔵庫に入れておいてもすぐに油が臭くなって食べられなくなってしまった。

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■ナムプリック・ヌム

ナムプリックヌム 上記のケープムーと並んでチェンマイを代表する名物のひとつ。青唐辛子に、ホームデーン(赤いらっきょうのような色・形をしたユリ科の野菜)、ニンニク、ナス(いずれも焼いたもの。ナスは皮をむく)を加えてつぶし、ペースト状にしたもので、ケープムーやカオニヨウ(もち米)、ゆでたオクラやインゲンなどの野菜をつけて食べる。青唐辛子が主材料なので辛さは格別で、日本人では食べられない人も多いようだが、慣れてくると病みつきになる味で、自分はこれにカオニヨウさえあれば後は何もいらない、と言えるくらいの好物だ。
 コン・ムアン(チェンマイ人)にとってはもっともベーシックな日常食であり、またクルンテープ(バンコク)から来た観光客は必ずといっていいほどお土産として買い求めるので、街なかのどの市場でも売られているが、ペット・マーク(激辛)とペット・ノーイ(辛さ控えめ)の2種類を用意していたり、水分が少なくちょっとパサパサっぽいものがあったり、唐辛子をあまりつぶさずに原形を残した状態のものがあったりと店によってそれぞれの特徴があるようで、それらを色々と試してみて、自分のお気に入りの味を探すのも楽しい。辛さは若干抜けるものの、冷凍保存も可能なので、日本に持って帰ってきてスティック野菜などに添えて出せば、よい酒のつまみにもなる。
 ケープムー同様にバリエーションも豊富で、ナムプラーが加わったものやプラーラー(小魚の塩辛風の調味料)を混ぜ合わせたナムプリック・ヌム・プラーラーも、独特の臭みがあって好き嫌いが分かれるものの、お勧めの一品だ。

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一品料理

■サイウア

サイウア サイウアの材料

 チェンマイの市場に行くと、少し黄色味を帯びた直径3〜5cm、長さ30〜40cmの棒状のものが炭火の上で焼かれているのをよく見かけるが、それが“チェンマイソーセージ”と英語で呼ばれることもあるサイウアだ。
 サイウアに使われる肉は豚肉だけで、赤身と脂身の比率をほぼ半々にする。サイウア作りのコツのひとつは、用意した材料をすぐに使って手早く作ることであり、通常豚肉は朝一番に仕入れたものを使う。ほかに唐辛子、ニンニク、玉ねぎ、万能ネギ、レモングラス、ウコン(これが黄色味を生み出す)、バイマックルー(こぶみかんの葉)、パクチーが材料となる。サイウア作りは、はじめに前述の野菜系の材料のうち、パクチー、バイマックルーと万能ネギ以外のものでナムプリックを作ることからはじまる。ここで言うナムプリックは、“ベーシックフード”で紹介しているようなものとは異なるサイウア専用のもので、これで味が決まってしまう、いわば店の最大の腕の見せどころだ。できたナムプリックに豚肉を混ぜ、さらに残してあるパクチー、バイマックルー、万能ネギを入れてさらによく混ぜて、豚の腸にそれを詰めていく。それを焼けばサイウアのできあがりなのだが、市場などでサイウアを売る店の多くは、手間を省くために準備されたサイウアを油で一度揚げて、ある程度火を通してしまい、それを焼いていることが多い。本来であれば、生の状態から炭火の上に乗せじっくりを焼くことによって余計な油分が落ちて、おいしさが増すのだが……。
 焼き上がったサイウアは、アツアツのうちに食べる方がよい。少し焦げ目がつくくらいに香ばしく焼かれたピリッと辛いサイウアは、特にビールのおつまみにピッタリの一品と言えるだろう。また、ビールのおつまみとしてだけでなく、カオニヨウ(もち米)と一緒に食べても実においしい。

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■カオガーダム

カオガーダム カオニヨウ(もち米)に黒くて小さな何かの植物の種をまぶした食べ物。タイ日辞典(冨田竹二郎著・養徳社発行、ISBN:4-8426-0067-5)によれば、ガーダムは“黒ゴマ”とされているが、写真で見てもわかる通り日本のそれとは種類が異なる。同書に、チェンラーイ県に多く植えられている種子の小さい種類のゴマとして“ガーモン”というのが紹介されているが、どちらかというとそちらに近いものかもしれない。これを食べさせてくれた友人によれば、ガーダムにはプロテインが豊富に含まれているという。
 ガーダムのプチプチとした感触ともっちりとしたカオニヨウの対照的な食感が印象的で、口に入れるとお赤飯のような味がする。

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■ヤムトゥアペープ

ヤムトゥアペープ 牛肉と野菜に唐辛子を加えて煮こんだ料理で、チェンマイ、チェンラーイなどで広く食べられているが、もともとはパヤオ地方の料理だとのこと。
 煮物といっても写真の通り汁気はほとんどなく、野菜もとけてしまっていてなかばペースト状になっている。唐辛子がかなり入っているがそれほど辛くはなく、肉と野菜のうまみが出ており、カオニヨウ(もち米)と一緒に食べると実においしい。

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■ゲーン・ホ

ゲーンホ レストランやタラートのおかず屋でよく見かける、割とポピュラーなチェンマイ(北タイ)料理。
 「ホ」は、カム・ムアン(チェンマイ語)で“余りものを何でも放り込んで作る料理”のことを指す。そのため、この料理を明確に定義をすることはむずかしいのだが、通常は春雨にわけぎ、インゲン、発酵させた酸っぱいタケノコ(ノーマイ)などの野菜がメインの具になっていることが多く、そこにゲーン・キヨウワーン(タイ全土で広く食べられている、ココナツミルクを使った緑色の甘いカレー)とゲーン・ハーンレー(豚のバラ肉を煮込んだ北タイ料理)加えて煮詰める。そのため、ゲーンという名前はついているものの通常とは異なり水分はまったくなく、春雨が入っていることも手伝って、一瞬焼きそばのように見えることもある。
 2種類のゲーンが入っているなど、確かに名前の通り余りものを何でも放り込んだ、というカンジがするが、食べてみると複雑な味ではあるものの決してバランスは悪くなく、ひとつの料理として完成されている。辛さもそれほどではないことが多く、旅行者でも比較的安心して食べられると思う。





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